Bang & OlufsenGenelec

Bang & OlufsenB&OGenelecSAMSmart Active MonitorB&O

この球体に組まれた再生システムは、直径3メートルのフレームにスピーカーを取り付け、無響室内に設置したもので、35台のGenelec 8320モニター、The Onesシリーズの8331(3ウェイ同軸モニター)5台、そして4台の7050サブウーファーで構成されています。これにより、シンプルなステレオや5.1チャンネルから22.2チャンネルまで、瞬時に再現可能なサウンド・フィールドを作り出すことが可能です。この唯一無二のシステムにより、研究者は特定のコンサート・ホールや、車内、リビング・ルームなど、様々な音響空間や音響条件を体験することができます。

B&O VR Lab

この研究プロジェクトの中心となるのは、残響の理解と分析です。具体的には、残響とは何か、音が反射面とどのように相互作用するのか、そしてそれがリスナーの体験に(良い面も悪い面も含め)どのように作用するのかを探るためのシステムとなります。

「私たちは現実の世界をラボに再現したかったのです」と語るのは、トーンマイスターであり、B&Oの主任研究者のネオ・カプラニス博士です。カプラニス博士は、B&Oの研究開発部門にて、EU-FP7コンソーシアムと共に、残響効果を補正することが可能かどうか検証する研究を行っています。

B&O VR Lab

「私たち人間の音響記憶は非常に短く、特定のスピーカーの音を長時間正確に記憶するのは難しいのです」と博士は語ります。

「例えば店頭でスピーカーを試聴しても、そのモデルが自分のリビングルームでどう聴こえるかは分かりません。同じスピーカーでも異なる部屋では異なる音がすることは分かっていましたが、具体的に何が異なるのかは分かりませんでした。このプロジェクトの主旨は、さまざまな空間の音響を調査して記録し、それを研究室の環境で簡単にシミュレートできるようにすることでした」

カプラニス博士は、このラボで、空間に対する固有の音響特性を捉える新しい録音手法を開発し、この球体のスピーカー・システムを使い、音響特性を正確に再生するコンピューター・プログラムを設計しました。

B&Oの研究部長でありオールボー大学の教授でもあるセーレン・ベック氏によると、GenelecとB&Oのコラボレーションは長年にわたるものとのこと。

「Genelecはエンジニアリングに基づく企業であり、私たちと似た哲学を持っています。いくつかのモデルを試聴し、私たちの目的に最適なSAMスタジオ・モニターを選びました。部屋の音響を録音し、それをラボ内に再現することで、異なる部屋で同じスピーカーを比較したり、また、同じ部屋で異なるスピーカーを比較したりという体験を行うことが可能です」

カプラニス博士も次のように付け加えます。

「私たちが求めていたのは、できるだけ透明性の高い、色付けのないスピーカーでした。つまり、何かオーディオ信号を入力すれば、それがそのまま出力される必要があります。そういった意味においてもGenelecは間違いなく最高のスピーカーであり、その高度に制御された広帯域指向性は、このプロジェクトにとって大きな利点となります。また、非常に軽量でコンパクトなので、球体内での配置も容易です」

このプロジェクトにおいてSAMモニターとGenelecのGLMソフトウェアの統合は非常に重要な役割を果たしました。

「フィルターの更新、個々のスピーカーのソロやミュート、グループ化ももちろんですが、全体のボリューム調整を瞬時に簡単に行えるのは、たくさんのスピーカーで構成されている今回のようなシステムにおいては、なくてはならない機能です。また、ボタンをクリックするだけで、さまざまなセットアップを簡単に試すことができるのも非常に便利ですね。個々のリスナーのリビング・ルームに実際に赴くことなく、異なる音響環境を研究室で非常に高い精度でシミュレートし、その環境下でのスピーカーのパフォーマンスを厳密にテストできることは、私たちにとってなにより大きな利点です。Genelecの音響設計と正確なサウンドのおかげと感謝しています」

Genelecのシニア・テクノロジストであるトーマス・ルンドは次のように述べています。

「デンマークには、2つのワールド・クラスの球体施設が車で短時間の距離内にあります。ひとつはオールボー大学にあり、もうひとつがこのB&Oの施設です。デンマークは、イマーシブ・オーディオという急成長している分野における新しい研究と検証のための基盤を整えている国といえます。3ウェイ・ポイント・ソース・モニターのThe OnesシリーズとGLMによるオート・キャリブレーションは、バイノーラルや室内音響の研究の可能性を広げることに役立っています」