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Auro-Cx

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まずはAURO-3Dの概要についてベルト・ヴァン・ダーレ氏の解説をもとに説明をしていきます。一般的にはDolby Atmosなどの登場で広く認知されていったイマーシブ・サウンドという言葉は、もともとAURO-3Dが提唱したもので、高さを持ったサラウンド・サウンドの総称です。


AURO-3Dが2010年に実用化したイマーシブ・サウンドはナチュラルなサウンドを目指して、高さ方向の次元を用いた表現をしているのが特徴です。このナチュラルな広がりを持ったサウンドを表現するために“3つのレイヤー”が必要で、レイヤー1(イヤー・レベル・レイヤー)は人の耳の高さで実際に聞こえるリアルな生活音など、レイヤー2(ハイトレイヤー)はよりナチュラルに聞こえるためにリアリティを持った音、例えば外であれば木々の葉の音、部屋ならルームトーンなどの反射音。図で見るところの30°方向のサウンドは、AURO-3Dが提唱するナチュラルなサウンド表現において重要だと考えられています。また、レイヤー3(トップレイヤー)は例えば飛行音などのエフェクトなどが挙げられます。


スピーカーの出力構造は部屋の広さによって2層構造、3層構造と変化します。特徴的なのはハイトにセンタースピーカー(AURO11.1ch以降)、最上部にトップスピーカーがあること(AURO10.1以降)。これによって上下のL-C-R(計6chのフロントスピーカー)で画面を囲むように配置され、より奥行き感のあるサウンドが得られます。



Auro-Cx

続いてAURO-3Dが提供するプロダクトの紹介がありました。これはコンテンツ制作に関連するものとしないものがあり、コンテンツ制作に関連するものはツールとオーディオ・コーディングで分かれ、前者はDAWと連携して使用するCreative Tools SuiteとEncoder Toolsが用意されます。後者はPCMのキャリアにしたプレミアムコーデックであるAuro-Codec、そして本セミナーの主役であるストリーミング用の次世代オーディオAuro-Cx、ストリーミングで映画を再生するためのAuro Maxがあります。またコンテンツ制作に関連しないものは、あらゆるソースをAURO-3D用にアップミックスするAuro-Matic、さらにオーディオレンタリングがヘッドフォンでのバイノーラルを再生するAuto-Headphones、そしてステレオもしくは5.1chなどで聞くための仮想3DオーディオAuro-Scene、Auto-Spaceと、計8種類をラインナップしています。

まずはAURO-3Dのサウンドを体感してもらうためのデモンストレーションを13.1chで構成されたセミナー会場で試聴しました。音源は48kHzのロスレスでAURO-3Dがあるベルギーからストリーミング再生します。AURO再生音源はまず環境音的なもので、人の雑踏音の立体感、トラックが近づき走り去っていく移動音をリアルに表現。映画的なサウンドの再現性に優れていることが分かりました。続いてパイプオルガンの独奏やクラシックのホールコンサートでは天井感の広がりを感じられ、コンサートなどの音楽配信にもメリットがあることも理解できました。


ここからはセミナーの本題である次世代コーデックのAuro-Cxについて。Auro-Cxの特性はスケーラブルなNGA(次世代オーディオ)コーデックであるとのこと。複数の音質やサンプリング周波数を、ひとつのビットストリームに同居させて送っていることが大きな特徴です。同時にAdaptive Bit Rate(ABR)をサポートし、同じコンテンツでありながらも回線のビットレートに合わせて変化します。例えば12Mbpsの回線速度があれば最高品質(192kHz)、4Mbpsならロスレス+Auro-Codec、3Mbpsならニア・ロスレスといったように回線速度の状況によってオーディオのクオリティがシームレスに変化します。これはオーディオ品質だけでなく、チャンネル・レイアウトやサンプルレートにも関係します。単一のストリーム内に複数の出力フォーマットがあるため、デコーダーは能力に応じて必要なものだけを抽出します。ステレオ・デコーダーならL/Rのチャンネル、5.1 decorderなら6ch、High-end Decorderなら22.2chに対応します。サンプルレートも48kHzから96kHz、192kHzがあります。




Auro-Cxの概要を理解したところで実際のサウンドを試聴。ここではジャズの音源をピックアップし、48kHzのロスレスからニアロスレス、768kbps、512kbpsと徐々にビットレートを下げながら、音質の変化を体験していきました。ビットレートが下がるにしたがって、音の密度や情報量が減る感じはあるものの、そのいずれも優秀な音質という印象を受けました。最後に192kHzのロスレスで再生したときは、金物の響きやピアノの艶感の密度の高さに、ストリーミングとは思えない印象を感じることができました。


音質面以外の特徴として、Auro-Cxはイマーシブ・オーディオ・フォーマットに加えてオブジェクトベース・オーディオもサポートしています。これによっていわゆるコンサートのリアルな臨場感はもちろん、映画音楽などの動的なイマーシブ・サウンドにも対応します。これは先述したAuroMaxのように、シアターの大規模なスピーカーレイアウトからホームシアターまで、インターネットによるストリーミング伝送&レンダリングが可能となります。



また、パーソナライズド・オーディオという機能もあり、例えばスポーツ中継などで、解説音声と会場の背景音を個別のオブジェクトとして送信できるため、解説音声の言語を選択したり、解説音声を無しにしたり、あるいは解説音声の音量や聞こえる位置を自由に調整することなどができます。このパーソナライズド・オーディオに関しては、実際のデモでスポーツ中継のサウンドを体験できました。解説音声と環境音が自在に調整できるのは、コンテンツを視聴する環境や楽しみ方に合わせられるので、とても良い機能だと感じました。



次世代コーデックとして注目されるAuro-Cxのセミナーは、会場も満員になる盛況ぶりで、あらためてロスレスを含めた高音質なイマーシブサウンドのストリーミングが求められていることを実感できました。セミナー中に聞いた192kHzのロスレスのサウンドには、ストリーミングとは思えないほどに豊かな表情があり、この試聴体験からもストリーミングの新次元を切り開くAuro-cxの優れたポテンシャルを感じることができました。