GenelecTHE MOMENT

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2022年12月、コロナ禍で人々の生き方や暮らしが様々な転換点を迎えていた中で、THE MOMENT JAZZ CLUBは誕生しました。平日はバー営業、金曜日・土曜日は一流のジャズ・ミュージシャンによる生演奏が披露される場として賑わっています。経営者の正木彩生さんは、店のオープンにかけた思いをこう語ります。

コロナ禍でミュージシャンたちの仕事がなくなる状況が続き、何か自分にできることはないかと。このままでは、生の音楽に触れる、その楽しさを伝えていく文化が消えてしまうのではないか…そんな危機感を覚えたんです。飲食店が次々と閉店していく時期でしたが、今こそアコースティックな音楽に触れられる場所を未来へ繋いでいこうと、この店を始めました

THE MOMENT JAZZ CLUB

自身もバークリー音楽院出身で、ジャズ・ピアニストとして活動していた正木さん。「せっかくジャズ・クラブを作るなら、ミュージシャンたちが演奏に没頭できる店にしたかった」と、そのコンセプトを教えてくれました。

こういう中小規模のジャズ・クラブって、普通の飲食店だった場所を改装したりとか、音響的な配慮が元々されていない空間が多いんです。音楽演奏のための専用設計になっているオペラ・ハウスやコンサート・ホールとは違うんですよね。そもそもジャズ喫茶がサブカルの文脈でスタートしていて、"アングラ感" が味になる世界でもありますし。もちろんそれもひとつの文化として良いんですが、実はミュージシャン目線だと、そういう空間では演奏がしにくい側面もあるわけです。よくある "箱型" の店内で大音量を出すと定在波が生まれるなどの問題があり、それを補うためにPA環境を整えるという考え方が一般的。そこで私は、そういうジャズ・クラブが抱えてきた基本の音響問題をまず解決しようと。予め音響設計の考えられた空間とし、ミュージシャンが演奏しやすい店にすることが大きなテーマでした

THE MOMENT JAZZ CLUB

そう、THE MOMENT JAZZ CLUBがジャズマンや音楽好きから注目を集める大きな理由。それは、“ミュージシャン目線で作り上げられた空間”であることなのです。

店内の壁面は杉材で覆われていて、木材の暖かみが感じられる明るい空間を演出していますが、実はこの杉材で中高域を効果的に拡散する構造になっています。さらによく見ると、定在波対策で並行面を無くすため、各壁面が斜めにツイストするような形になっているのです。これは捻じった壁面を組み合わせることで、ひとつとして同じ反射角のない特殊な幾何学を作り、空間内で反射音の焦点が決して生じないようにするための設計です。また躯体には低域用のトラップ材が埋め込まれ、壁の内側には吸音材が仕込まれるなど、空間全体でサウンドチューニングが行われているのがわかります。

基礎設計とデザインは、建築家の手塚貴晴さん+手塚由比さん夫妻によるアイデアです。根本的な音響問題を解決するためには建築目線のアプローチが必要と考え、インテリアデザイナーさんでなく建築家さんに依頼しました。また、常時外気を取り込みながら店内の温度、湿度を、24時間365日、常に一定に維持する換気システムを導入し楽器や機材のコンディションを管理しています。

THE MOMENT JAZZ CLUB

Genelec

そんな、ミュージシャン目線でイチから作り上げられたお店に必要不可欠だったのが、Genelecのスピーカーでした。正木さんはGenelecスピーカーを選んだ理由として、サウンドの良さに加え、運用がしやすい“最先端”の設計思想に共鳴したことを挙げました。

ジャズというと、JBLやTANNOYなど昔から使われてきた定番スピーカーを思い浮かべますよね。もちろんそれらも素晴らしいのですが、私たちジャズマンは、常に時代の最先端の音楽を鳴らしている意識でいます。ジャズとは、何か新しいものを生み出すマインドのことなんです。ひとりのジャズマンとして、10年後も20年後も変わらず最先端でいたいという思いが根底にある。そこでサウンドの面でもシステムの面でも共鳴したのが、Genelecのスピーカーだったんです。同軸設計による正確性の高いサウンドと、GLMによる運用のしやすさ。まさに“最先端”のスピーカー思想が魅力でした

GLMとは、Genelecスピーカーの最適化とカスタマイズを行えるソフトウェア「Genelec Loudspeaker Manager(GLM)」。直感的な操作と短時間の測定で、室内環境に合わせてスピーカーを最適化させる強力なオート・キャリブレーション機能など、様々な機能を搭載しています。

店内に実際にスピーカーを置いてどこまで音が出せるか、使ってみないとわからないわけですが、導入後にGLMで調整できるなら安心です。使いながらアップデートできますし、これが大きな決め手でした。あと、パッシブスピーカーだとパワーアンプとの相性を考えて運用しなくてはなりませんが、Genelecのアクティブスピーカーなら、内蔵アンプも含めてスピーカー設計が完成されているのも心強かった。機材選びの際は、ジェネレックジャパンの試聴室でいくつか試聴して、音楽的な表現を優先し最終的に8361Aを選択しました。デザインが無骨すぎず、お店に置きやすいのも良いです

THE MOMENT JAZZ CLUB

3ウェイ同軸ポイント・ソース・スピーカー「8361A」。極めて広いダイナミック・レンジと比類のない音像を特徴とするフラグシップ・シリーズ "The Ones"の最もサイズが大きいモデル。アーティストが意図した全てのディテイルやニュアンスまで体験することができます。また、本記事にて8361と組み合わせて使用している「W371A」は、一般的なサブウーファーとは一線を画す革新的な製品。2基のウーファーを搭載し、超低域から上限500Hzまでをカバーすることにより、低域の再現性を飛躍的に向上させフラットでスムースな低域のイメージングを得ることができ、部屋の音響特性によって生じる低域の問題に対しても3つの動作モードで柔軟に対応可能。8361Aの性能をさらに高い次元へと引き上げます。


そして「もちろん、何よりも音のクオリティが素晴らしい」と正木さんは言います。

平日のバー営業時にはレコードを鳴らしていますが、カウンターに座ったお客様から“本物の演奏かと思った”と言われたこともあるんですよ。生演奏のPA機材としても音がリアルで、演奏者もお客様も気持ちよくなれる“生音感”のある音を鳴らしてくれるなと感じますね。音が鳴った時に“スピーカーが消える感覚”をもたらす、まさに理想的な聴き心地を実現したスピーカーです

THE MOMENT JAZZ CLUB

THE MOMENT JAZZ CLUB代表の正木 彩生氏

公式ウェブサイト:THE MOMENT JAZZ CLUB
設計:手塚貴晴+手塚由比 / 手塚建築研究所