英国ハダースフィールド大学 応用音響心理学研究所での最新研究を支えるThe Ones
特にイマーシブ・オーディオでは
GLMの効果は絶大です。
「最近、私たちは拡張現実(XR)アプリケーション向けのバーチャル・アコースティックに注力しています」と、APLの創設者兼ディレクターであるヒュンコック・リー教授は説明します。「私たちは、6自由度オーディオの拡張現実処理エンジンを開発するプロジェクトに取り組んでおり、その成果として、バイノーラル・レンダラーのVirtuosoを開発してリリースしました。
「また、VRヘッドセットやディスプレイ・システムを使って、音の手がかりと視覚的な手がかりの相互作用についても多くの実験を行っています」と彼は続けます。「没入感を提供するのは音だけではなく、視覚の影響も非常に大きいんです。私たちは、映画を観たり音楽を聴いたりする際に、どのように没入感を感じ、どうすればそれを高められるのか、そしてその知覚的な要素が何であるのかをこの研究所で日々研究しています」
APLのクリティカル・リスニング・ルームでは、これまで10年間にわたり、24台のGenelec 8040モニターと7070サブウーファーを使用してきましたが、今回のアップグレードでは、そのうち15台が「The Ones」シリーズの8341に置き換えられました。
リー氏はその理由について、「2つの大きな理由があります」と振り返ります。「1つ目は、The Onesが部屋のどこに座っても、優れた音色の一貫性を提供してくれることです。この部屋には多くの人が集まることが多いため、この点は非常に重要です。たとえば、最近のAES国際会議では、21名がこの部屋で聴きましたが、どこに座っても音色のバランスが均一で、素晴らしい体験が得られました。
The Onesは、どこに座っても
音色のバランスが均一です。
2つ目は、研究において音響の中心位置が重要なためです。8040ではツイーターとウーファーの間で平均を取る必要がありましたが、The Onesシリーズは、同軸ポイント・ソースのため、音響の中心を正確に把握することができます。」
このアップグレードにより、APLではThe Onesを使った、Dolby Atmos 9.1.6の環境が構築できるようになり、残りの8040モニター9本を、ボトムレイヤー、ハイトレイヤー、リアセンターの位置に配置することにより、NHKの22.2マルチチャンネル音響のような高いチャンネル数のフォーマットにも対応できるようになりました。
さらに、GLMソフトウェアの導入により、部屋の音響調整が簡単になった点も大きな利点です。「9.1.6システムを5分以内でチューニングできるのは大きなメリットです」とリー氏は語ります。「特にイマーシブ・オーディオでは、GLMの効果は絶大です。ステレオでも違いはありますが、9.1.6のように多くのモニターが協調するシステムでは、全体を部屋に合わせてチューニングできるのは非常に大きな強みです」
新しいシステムが導入されたことで、APLは、イマーシブ・オーディオ環境に関する我々の知覚や理解を深める研究を、さらに進化させています。「最近では、バイノーラル・オーディオを使用したバーチャル・モニタリングや拡張現実アプリケーションに焦点を当てています」とリー氏は説明します。「そして、現在の私の研究は、没入型体験を提供する上で、音声が果たす役割に焦点を当てています。そのためには、コンテンツ制作者が没入型オーディオについてどう考えているのか、そしてユーザーがこれらの没入型システムからどのような体験を期待しているのかを理解することが重要です。お互いを理解し、このギャップを縮めるために作曲家、プロデューサー、エンジニア、研究者、開発者が集まり、空間音響を本当の意味で”イマーシブ”にするために必要なものについて話し合い、協力し合う必要があります。」
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