創造力を拡張する全く新しい没入空間 - 紀尾井カンファレンス"RICOH PRISM"
事務機器や光学機器の製造をはじめ、オフィス環境に資するデジタル・サービスを広く展開しているリコーが打ち出した「RICOH PRISM」は、次世代の会議空間の在り方を世に問う画期的な実験施設です。そのコンセプトなど概要について、コンテンツの企画・設計・開発を担当した高野洋平氏はこう話します。
高野 「弊社は『"はたらく"に歓びを』のビジョンを掲げ、働く皆様に寄り添った様々なソリューションを提供させていただいています。RICOH PRISMもそうした施策のひとつで、"チームの創造性を高める次世代の会議空間"として企画されました。キーワードは"デジタル・アルコール"ーーつまり、デジタル技術による没入感やトランス状態となる感覚を活用しながら、センシング・デバイスで人の活動を感知し、光や映像、サウンドをフィードバックすることで、その人がいちばん良い状態で、目的に向かって最もクリエイティブになれる空間を作り出したいと考えています」
RICOH PRISMは2020年10月、同社の実践型研究所「3L(サンエル)」に最初の施設が誕生しました。検証を重ね、そこで得られたデータを蓄積した後、今度はいかにして忠実に外部の施設へインストールできるのか。このテーマを踏まえた実証実験の第一弾となるのが、紀尾井カンファレンスの当施設です。そのサウンドの役割について高野氏は続けます。
高野 「没入して欲しい時、集中して欲しい時、普段とは全然違う感覚になって欲しい時の音、ブレイン・ストーミングのシーンで聴こえるナレーションなどの優しく誘導効果のある音、リアルタイムに生成される音楽でその場に合った空気感を作る音。音響効果については大きくこの3点に注目しました。そしてこのプロジェクトを通じて、"音って大事なんだ"と改めてその重要性に気付けたことは大きな学びでした」
高野氏が重要と話すサウンドの重要性については、センシング・デバイスにも大きく関係しています。室内は4名までが利用でき、その一人ひとりの行動に対して反応する音はおよそ80の素材の組み合わせにも昇ります。それらの音は絶えず変化しながら生成され、利用者の熱量や、さらにはその日の天気や時間帯などもパラメーターとして取り込まれます。「部屋が応えてくれる」と表現するこの音は、それぞれの利用者に紐付けられており、発話量に応じて再生されたり、発言している人のポイントでは声の帯域を邪魔しないようにBGMにEQ補正をかけたりと、非常に緻密な処理がリアルタイムに行われているのです。
こうした目的を持つ音の素材を制作/プロデュースし、音響システム導入のサポートにも携わったのがラダ・プロダクション(関連ページ)の菊地晴夏氏です。
菊池 「RICOH PRISMでは、目的に合わせて用意された8種のアプリケーションを自由に切り替えて体験いただけるのですが、とにかく没入感を高めたいというシーンがあるかと思えば、会話を促しナレーションが必要なシーンもあるなど、音響が果たす役割がアプリケーションによって変化します。そうしたシビアな条件のもとでは、使用するスピーカーが持つ低音のクリアさ、定位感の切れの良さは大事なポイントで、今回Genelecスピーカーを採用した大きな理由もそこにあります」
Genelecは本来持っている音の
奥行きをより感じさせてくれる
RICOH PRISMの事業化を見据え、「3Lで運用していたオリジナル施設を、可能な限り再現できるような音響システムを構築することが大きな課題でした」と語るのは、当プロジェクトのハード面の設計やデザインを担当した木村優太氏です。
木村 「紀尾井カンファレンスのような既存の施設に仮設で作る場合は、様々な制約が付きものです。設置の難易度、振動の影響、そしてコスト面を考え、3Lでは導入したサブウーファーの設置をここでは見送ることにしました。そこで今回は、サブを使わなくても十分な低域が得られるスピーカーを選ぶ必要があったのです」
紀尾井カンファレンスのRICOH PRISMには、Genelecの8320が8台導入されています。
菊池 「音響効果には、その部屋をより広く感じさせたいということも狙いにありましたので、本来持っている音の奥行きをより感じさせるスピーカーがいいな、と思っていました。約5m四方の空間にスピーカーを8台設置すると低音が溜まりがちになって定位も分かりづらくなるという特性があり、そこをどう回避するかはなかなか難しい課題でした。リッチなサウンドが得られるよう様々なサイズを検討しましたが、3Lに8320Aを持ち込んで試したところ、これなら大丈夫という感触が得られたのです。空間に対して低音域まできちんとカバーされ、なおかつ定位感がよくまとまるのが、このサイズだと判断しました。8320では音の奥行きがしっかりと感じられ、実際の空間よりも感覚的な広さがましたと感じています」
さらに、設置環境に対してスピーカーを最適化させることのできるオート・キャリブレーションを備えたGLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアが利用できることも、Genelecを選択した大きな理由だったと木村氏は話します。
音の専門家ではない僕でも、
GLMは直感的に操作できました
木村 「弊社のメンバーに音響のプロはいません。今後RICOH PRISMの事業化を考えると、サウンド・エンジニアではない我々でも3Lと同じような空間を再現できるシステムの構築が不可欠ですが、その意味でもGLMは大変有効でした。音の専門家ではない僕でも、GLMは直感的に操作できました。マイクの設置も簡単で、キャリブレーションも複雑な操作は必要なく、自動で全てのスピーカーを正確に調整してくれるので、3Lのような音響を簡単に再現することができました」
菊池 「建物によって床や壁の素材が異なり、特性も違ってくる中で、3LのオリジナルRICOH PRISMをいかに再現できるか。また、その部屋での音響的なポテンシャルを最も発揮できる状態にどう持っていけるか。この課題を解決するためにも、GLMが使用できたのは大きかったですね。それに加えてGLMは仮説を立て実験し、そして結果を出すというプロセスが簡便かつ素早く行え、視覚的にも確認できるのが良かったです」
映像や音の演出に使用される主な機材は、全て天井部に組んだトラスや壁面に設置されています。プロジェクターやスピーカーのほか、人の位置や姿勢を感知する各種センサー、カメラなどもあり、「場所取りが結構大変でした(笑)」と木村氏が話すように、必ずしもスピーカーの位置を優先的に決められない事情もあったそうです。
木村 「いろんな機材の全体最適を図りつつも、筐体が大きくて重く、設置精度が要求されるプロジェクターが最優先になってしまいます。スピーカーは、トラスを避け各種センサーにも干渉しない配置としなくてはなりませんでしたが、アルミニウムを使用したコンパクトな筐体と豊富な取り付け用アクセサリー、そしてGLMによって簡単に音を最適化できたことは本当に助かりました」
実際にRICOH PRISMを体感すると、光がチームの感情や考えを映し出し、その時々にぴったりの音がムードを盛り上げ、香りや触感まで駆使した緻密な空間が脳細胞を刺激。集団としての創造力を拡張してくれる他では得られない経験でした。
高野「"テクノロジー"と"空間"、そして"働く"を組み合わせると、便利な一方で、監視されていると感じてしまうかもしれません。この部屋にもたくさんのセンサーが付いていますが、"これならデータを取られてもいいかな"と思っていただけるようなリッチな体験としてお返しできるように設計しています。我々が提供する、一歩先を行く刺激的な働く体験をぜひお楽しみください」
RICOH PRISM
所在地 東京都千代田区紀尾井町1番4号 東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー4F
ウェブサイト www.prism.ricoh
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